第6章 願わくば
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今日はすみれが出席している舞踏会に、来賓客として来ている。
もちろん、仕事(記録)のために。
主に仕事をするのは、じじいだが。
舞踏会を知れと言われ、早々に自由勉強という名の放置をくらっている。
と言う訳で、俺はすみれの様子を覗っている。
(…ダンスと愛想笑いの談笑ばっかで、すみれは大変そうさね)
すみれの事だ、きっと叔父叔母に付き合っているんだろう。
すみれから積極的な様子はない。
(あっ、あの野郎、すみれにベタベタしやがって…すみれもされるがままになってんじゃねえさ!)
だいたいの男は、すみれの叔母に言われて…という感じだが、たまに下心ありそうな奴がいる。
(…なんで、俺がそんなこと気にしてんさ)
はあ、と一人ため息をつく。
二人で出掛けたあとから、調子が狂う。
すみれのことは、まあまあ可愛いやつだと思う。
一般的な可愛さで。
スタイルや顔立ちから、中の中。良くて上の下くらいには、と思う。
すみれは良い奴だ。好きだ。
一緒に居ると楽しくて、ほっとする。
でも、この“好き”は
きっと恋や愛ではないーーーーーー
(…うわ、あの令嬢めちゃタイプさ。ストライク!)
目に留めた令嬢は、いわゆるボンッキュッボンの色気むんむんの金髪美女。
俺の視線に気づき、パチッとウィンクを送ってくれた。
いけね、鼻の下が伸びそうになる。
やっぱ、ああゆうのが好きだ。
すみれは俺のタイプではない。
“ストライク!”、も無い。
しかし、多少の独占欲は、何故かある。
(きっと、友達や姉を慕うような気持ちだから さ)
そうのように自分自身を分析し、納得させていた。
ふと、すみれに視線を戻す。
泣きぼくろが印象的な色男と談笑し、頬を僅かにピンク色に染めていた。
モヤっとする
すると色男はすみれの手を取り、ダンスを始めた。
グッと二人の体が……密着しすぎじゃね?
すみれと色男の二人に、目線が釘付けになってしまった。