第6章 願わくば
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《ティキ視点》
タバコをふかし、青空に向かって煙を吐く。
鯉を食べてるところを、見られてしまった。
ま、このお嬢さんなら問題なさそうだ。
「すみれも結構変わり者たぜ?勉学好きなエキゾチック令嬢なんて言われてるだろ?」
「え、そうなの?知らなかった」
驚くものの、自分のことなのに興味なさそうに言う。
「私もこうゆう世界に興味ないの。虚勢と見栄ばかりで、つまらないじゃない。」
終いにはゴロッと仰向けになってしまった。
おいおい、令嬢だろ?
「そんなとこに寝転がって、いいのかよ?」
「芝生だし汚れないよ。ティキを見てたら、頑張って気取る必要ないかなって」
俺が心配したのはドレスの汚れではなく、レディとしての振る舞いだったのだが。
「こんな令嬢いるんだな」
目が点になり、ポツリと言ってみる。
俺が知ってる令嬢は噂好きで、中身空っぽで、玉の輿狙いの女豹がドレスを着たような人間だ。
「鯉を生で食べる人の方がいないよ?」
「一応、内緒な?知られたら家族に怒られちまう。」
「私が喋ったところで、誰も信じないよ!ティキが生で鯉を食べてたなんて!」
なんだかこの空気感が心地よい。
「なあ、今度さ。俺が主催のお茶会をしなきゃいけねーんだけど、来てくんね?」
するとすみれは、がばっと起き上がり
「え!やだよ!」
即答した。心底嫌そうな顔をして。
えー 俺のお誘い、断られることなんてあるんか(笑)
自分でもビックリしている。
「だって。他の令嬢や子息は、絶対にティキと仲良くなろうと躍起になってるでしょ?そんなギスギスしたとこ嫌だよ!」
「だから来て欲しいんだって。クソつまんねーお茶会だけど、すみれがいたら楽しいし?俺が。」
「身に余るので遠慮致します」
「そこをなんとか!」
素のやり取りが、楽しい。
……………ただ、気になるのは。先から視線を感じる。
正確には、主にすみれに注がれている。
「頭に葉っぱ付いてんぞ」
「え?どこ?」
俺はすみれに向かって手を伸ばす。
おお、視線が痛いくらいに強くなった。
ちょっと面白えな。視線の元をあぶり出してやる。
すみれの頬に手を当て、フェイスラインをなぞるように、つつつ…と指を滑らせ、顎に手を置く。
すみれの唇に、俺のを重ねーーーーーー