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49番目のあなた【D.Gray-man】

第5章  想う




ブックマンの仕事として(俺はまだJrだけど)、すみれの屋敷を出入りしている。

じじい曰く、この屋敷の出来事を中心に戦争が起こり得るらしい。

すみれは記録の対象外で良いか確認のため、彼女の周りを観察していた。
かなりの貴族令嬢なのに、勉学に励んでいたり、倹約家だったり。
生活ぶりを見ていると、意外な行動ばかり。


(ま、明らかに記録の対象外さね。)


対象外であることに、気を抜いていた。
だから、声をかけちまったんさ。


「難しそうな本を読んでるさね」

これが、ブックマンとして 記録者としての
過ちに繋がってしまうなんて思いもしなかった。


すみれは良い奴だった。
貴族令嬢なんて、良い意味で似合わない。
一緒にいるのが楽しくて、つい入り浸るようになってしまった。
年上なのに、可愛がりたくなって。
ちょっかい出したくなって、喜ばしたくなる。
笑わしたくなる。


彼女に惹かれている自分に、気づかなかった。


俺が惹かれる女性は、見た瞬間“ストライク!”と、ビビビッとくるのに、すみれにはなんも。

だから、二人で出掛けた時
すみれが他の男に触られそうになった時、
初めて 独占欲が湧いた。

すみれが急に可愛く見えて、焦って、プレゼントしてみたり。
会えない間、俺のこと忘れませんようにって。


「まっ…毎日、付けるよ!大事にする、すごく。」
普段、日頃から宝石を身に着けてるくせに。
そんな物に比べたら、こんなビーズのヘアクリップなんて、ガラクタだろうに。

なんで涙浮かべて、喜んでんさ。
その笑顔に心がぎゅっと苦しくなる。

あぁ、すみれはこういう人間なんだ。


俺は、人間に失望してた。
欲深くて、学習しなくて、愚かで。

けど、すみれは全然当てはまらなくて。
だから、俺は惹かれてしまっていたんだ。





すとん  と、

心に何か、優しく落ちた気がした。







ーーーーーーー好きだ  







と、想ってしまったんだ。

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