第5章 想う
「知ってるさ?ビジューっていうビーズのこと。
最近では、ビーズは宝石を超えた!なんて言われたりしてるらしいさ」
それに魅入りながら、知らないと首を降る。
ディックは私の手からヘアクリップを取り、髪に留める。
「俺がいなくて寂しかったら、付けてな?」
カジュアルにもオフィシャルでも似合うさ、と。
私、現金なヤツかな。
さっきまで惨めだったのに、今は幸せな気分でいっぱいだ。
「まっ…毎日、付けるよ!大事にする、すごく。」
目が、潤んでしまったかもしれない。
何故か言葉が詰り、嬉しさを言い表せられない。
一瞬、ディックの隻眼が見開いた気がした。
「…なんて、言ってみたけど。本当は俺が寂しかっただけ。」
帰るさ、と前を向いて手を差し伸べてくれる。
「今日はどこまでも紳士なんだね」
手を握り返す。ふふっと笑みが溢れた。
「今日は本当にありがとう…ディック?」
反応がなく、不思議に思いディックの顔を覗き込むも、顔を逸らされる。
「…今は、こっち見んでほしいさ」
夕焼けで全てが赤く染まった世界でも、わかる。
ディックの耳が真っ赤になっていた。
そんな彼を見て
幸せだなって、想ってしまったんだ