第17章 想い思われ反発して
「ねえ!僕の言葉もわかる?ニャーニャー!」
「全ッ然わかんねーさ」
「えぇ〜?何でわかんないのー!?」
「ジョニーはただニャーニャー言ってるだけだろ?」
「にゃあ…」
「いや、何が違うのか俺にもさっぱりさ」
「にゃあ、にゃにゃ?」
「ダイジョーブさ。オレ、今日は非番だし」
「にゃあー…」
「別に迷惑とか思ってねーさ!
…んじゃあ、お礼と言っちゃあアレだけど。また休日遊び行こーぜ♪」
「「「ねぇ、何で言葉わかるの?」」」
満場一致で、すみれの薬の効果が収まるまで通訳係はラビとなった。
「にゃ〜……っ」
棚の高い所に仕舞われ書類。手が届きそうで届かない書類と悪戦苦闘していた。
何処にあるかもわからない脚立を探してくるか。または理解してもらえない猫語でコミュニケーションを取り、誰かに書類を取ってもらうか。
……どちらも非常に厄介だ。
(あと、あとちょっと…っ)
「―――ほい!コレだろ?」
「にゃあっ!(ラビっ!)」
「オレはすみれの通訳係だろ?言えよなー」
「に、にゃあ…(ありがと…)」
「ん、いいって」
ラビは何事も無かったように椅子に座り再び読書を始める。
すみれはそろりそろりと再び本棚と向き合い、更に高い箇所で乱雑に仕舞われた書類に手を伸ばす。
「次はコレだろ?」
「にっ…にゃっ? (な…なんで、わかるの?)」
しかし彼女が行動する前に読書をしていたはずのラビが、沢山置かれた物の中から迷うことなくソレにひょいっと手を伸ばす。
「コレ、取ってほしかったんじゃねーの?」
「にゃにゃ… (ありがと…)」
「どーいたしまして、さ」
(((((なんで分かるんだろう…)))))
喋れない弊害など無いかのようにコミュニケーションをとるラビに、科学班のメンバーは誰しもそう思った。
(すみれはただ、猫語を言っているだけさ)
それだけなのに、可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みだろうか。
ラビは本から視線を外し、チラッと目の前に居るすみれを盗み見る。
真面目な彼女の口からにゃーにゃーなんて聞けるのはある意味では耳福だ。
そして彼女の猫語を理解出来るのは自分だけ。
(科学班、良いモン作るさね♪)
密かにこんな事を思うラビであった。