第16章 覚えておいて
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「ほんと。ダメだなあ、私っ」
思わず涙が溢れてしまった。
多分、リナリーは私が泣いている事に気づいている。だけど気づかないフリをしてくれている。
『私ね、すみれが羨ましい。兄さんの力になれて』
そんなことないよ、そんなことない。
力になってもらってるのは、私の方だから。
『…時々ね?凄く思い詰めていそうな時がある』
表情や雰囲気に出してるつもりなんて無かった。
ふとした時に、私は楽しさや幸せを感じていいのかなって。
後ろめたくなってしまうんだ。
『すみれの本当の笑顔が見れたような気がして、嬉しかった』
そんなこと言われたら、
『すみれは、幸せになっていいんだよ』
許されたような そんな気がしてしまうよ。
自分の戒めを周りに気遣わせて、なんて迷惑な話だろう。
なのに、どうして。
嬉しく思ってしまった、なんて。
口が裂けても言えない
「…私も、ね。リナリーが羨ましく思うことがあるよ」
「え?」
「可愛くて、強くて。
誰にでも優しくて…ホームの皆を誰よりも大切に想ってる、そんなところ」
「すみれ…」
「私も、リナリーみたいになりたい」
自分の事ばかりじゃなくて、もっとみんなの為に。
誰かの為に生きたい。
それぐらいは、許されるだろうか
「…ありがとね、リナリー」
「―――ううん!」
そして、私にとってラビは周囲から見てもわかるくらい特別な存在なんだと認識させられた。
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「私、もうちょっと買い物していくわ」
「だから、すみれは先にラビと合流して?」とリナリーに言われ、店を後にした。
…リナリーに、気を遣われちゃったかな
「ラビに、会いたくなっちゃったな…」
あんな話をしたからだろうな
“すみれ〜っ♪仕事終わったさー?”
“ちょ、ラビ!!首絞めないでってば!”
いつもみたいな、あの屈託ない笑顔を見たいな。
「もう、自分を誤魔化すのは。厳しいかな…」
ハハッと自嘲気味な笑いがこみ上げる。
私は一体どうしたいんだろう。どうしたらいいんだろう。
でも、兎に角今は
「ラビ…」
あなたに 会いたい