第15章 繰り返すモノ
良くも悪くも、黒の教団には色んな人がいて。
私は特別じゃなかった。
ブローカーに育てられたと知られたら、此処を追い出されるのではないか。
処罰や差別を受けると思っていた。
しかし、此処にはAKUMAに大切な人を殺された人が沢山いて。私のような境遇も特段驚かれることではなかった。
『…大変、だったな』
『今日からここがホームだよ』
世界は広くて 優しかった
“幸せになってはいけない”
そう思うのに
此処での日常は幸せが溢れている
孤独ぶるには、不幸ぶるには
みんなの優しさに触れすぎていた
予想もしてなかった現状に、決意や戒めが揺れ動く。
ーーーーーそんな時、
大好きだったディックが“ラビ”として現れた。
『ーーーなぁ、すみれ!』
『すみれ〜っ♪』
以前よりも距離感が近い。
物理的にだろうか?以前は屋敷に来てくれたものの、窓越しだったからだろう。きっとそうだ。
胸を躍らせている自分がいる
昔好きだった気持ちが、再び溢れそうになる。
………いや、こらは仲間としてだ。そうに違いない。
「すみれ、最近変わったよなあ」
「え?そう?」
タップに声をかけられる。
二人とも目と手を話せないため、互いにそっぽを向きながら話す。
「なんか楽しそう」
「ラビが来たから?」
ジョニーも会話に入ってきた。
「そっ、そんなんじゃ…」
「ラビもすみれに懐いてるもんな」
「…以前から知り合いだったからだよ」
「貴族令嬢だったんだってね!」
も、もう知られてる…っ!
「それ聞いて納得したわ」
「え?」
「なんか品があるもん、すみれって!」
「育ちが良いんだろうなーとは思ってたけどな。だからラビが心配してよく来るんだろ?」
「な、なんで?」
「こんなキッツい労働、したことないだろ?いっつもラビはすみれのこと気にかけてるもんな」
「ほんと、しょっちゅうすみれの所在聞いてくるよね!よっぽど心配してるんだと思うよ」
「…」
「すみれ?」
「ううん、何でもないよ」
もう恋なんてしない
何度も自分に言い聞かせる。
そう言い聞かせている時点で、手遅れになっている事に私は気づかなかった。