第2章 再び
振り返ると、そこには白衣を着た女性がいる。
「やっぱり…ディックっ」
女性の目がこれでもかと大きく見開かれる。
「……すみれ?」
彼女の名を口にした。
すみれの目から一筋の涙が頬を伝った。
「…すみれっ!」
すみれの側へ駆け寄る。
夢かもしれない
二度と会えないと思っていた
再び会える、なんて
「…ずっと、元気にしてた、さ?」
「うん…ディックの、おかげでっ」
すみれの瞳に、再び俺を映してもらえるなんて
すみれの口から、再びその名を呼んでもらえるなんて
やっぱり、夢かもしれない
「すっかり見違えて…一瞬、気付くのが遅くなっちまった」
そう、俺の知っているすみれは
今のように素顔など見せず、化粧が施されていて。
無造作に束ねられた髪ではなく、いつも綺麗に結い上げられていて。
薄汚れた白衣や私服ではなく、綺羅びやかなドレスを着た
貴族令嬢だった。
すみれと再会できて
こんなにも嬉しい、のに
何故、聖戦の関係者になったんだ
平和などこかで幸せに暮らしていて欲しかった。