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49番目のあなた【D.Gray-man】

第10章  トリック・オア・トリート《番外編》


「へ?俺がもらってもいいんか?」

「だって、それはディックのために作ったものだし。それに、ほら。あそこ見て?」

すみれが空を指差し、ディックも上を見るとカラス達が飛んでいた



「きっとカラスに荒らされちゃう。お墓も汚れるし、勿体ないから食べて?」

「…そんじゃ、遠慮なく頂くさ。」

「うん!…ディック、行こ?」

「もう、いいんさ?」


ディックはすみれを気遣うように、じっとすみれを見つめる。

…私、優しいディックが大好きだよ



「うん!もう大丈夫だよ!」


もう、ここに来るのは悲しくない


「それじゃ、行くさ」

ディックはすみれに手を差し伸べる。

「うん!」

すみれはぎゅっと、ディックの手を握る。
その手を離さないように

二人は、すみれの両親が眠る墓地を後にする。



「俺、何か温かいもん食いたいさ〜!」

「いいね!ハロウィンっぽい、カボチャスープとか?」

「焼き肉」

「全然ハロウィンっぽくな…わっ!」


突然、すみれとディックを包み込むかのように、風が落ち葉ごと舞い上がる。すみれは目にゴミが入らぬよう、思わず目を瞑り視界を遮った




ーーーーーー愛してるよ、すみれ



「えっ?!」

「?、どした?」

「今、何か聞こえなかった?」

「いんや、何も?」

ディックはキョトンとしている

「そっか…」

「風の音と、聞き間違えたんじゃねーの?」



行こうぜ、とディックに手を引かれる。

多分、風の音じゃなかった。
はっきり聞き取れなかったけど、声が聞こえた。優しい、懐かしい声だった気がする。ディックが言っていた言葉を思い出す。

“ハロウィンって、秋の収穫祭や先祖の霊を迎える祭だろ”


もしかしたら、聞こえた声は。
お父さんや、お母さんだったんじゃないか。

そうだったら、いいな…


すみれは両親が眠るそこへ振り返る。




「……またねっ!」




次からは、笑顔で来るよ
楽しい毎日を報告するために





「どした?」

「ううん、何でもない!」

すみれはディックの手を、愛おしく握った。



Treat or  Treat?

私が欲しかったものは、お菓子じゃなくて


あなたの ぬくもりーーーーー。


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