第2章 再び
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ピチャン ポチャン
水滴の落ちる音が、地下水路に響く。
今は夜だがここは昼夜問わず暗いだろう。等間隔の灯火で水路が照らされている。
生き物の気配を感じられる音はなく、水滴の音とボートを漕ぐ音のみ響きわたる。
ボートに肘を付き水面にゆらゆらと映る自分の赤髪と、水路を照らす灯火を意味もなくみつめていた。
今から向かうのは新しいログ地である、黒の教団本部。
ブックマンとして記録を行うのは俺ではなく、師であるじじい。俺はブックマンJrとして、修行中さ。
まあ、どうせ何処のログ地に行っても
戦、戦、戦ーーーーーーー
「…ディック」
ボソッと小さな声でじじいに呼ばれる。
「あ?」
ザシュッ
返事をした途端、パンダ手で引っ掻かれた。
「いってぇ!何するさ!」
いきなりなんさ?!と、涙目になりながら引っ掻かれた頬を摩る。
「馬鹿者が!前のログ地の名で反応しおって!」
「…あれ?それで反応してた?」
あちゃー、いっけね
「…気を引き締めよ。
今回のログ地は今までで一番大きい戦になるだろう。我らは戦士となり、記録する。」
波風立たぬようにせえ、と釘を刺される。
…前回のログ地で、心当たりがなくもない。
チクッと胸が痛んだ気がしたが、気のせいさ。
何も問題ない。次からも、いつも通りさ。
「へいへい。それに当分の寝屋だしな。
いつも通り、ヘラっとして仲良くなるさ」
ニコッと上手に笑ってみせた。