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夜行列車に跨って

第7章 6shot


「ちょっと待って、すぐ開けるから」


タクシーから降りた直後、スルスルとマンションのエントランスへ向かった。
鍵穴式のエントランスで、ワタワタと壮真くんが鞄を漁りながらキーケースを探す。


車内で彼とより親密になった私は、「手伝おうか?」と尋ねる。


「んー…。んーん、いい。」


見つけたキーケースから、銀の鍵を差し込み捻る。
スライド式のドアが開いた。


「そまみちゃんには、後でいっぱい手伝ってもらうから。」


余裕いっぱいの顔で笑う彼の瞳は、情事を暗示するようにギラついていた。


エレベーターに乗り込み、階数ボタンを彼が押す。


「何か飲みたいのとかあるー?」


2人でエレベーターの階数表示パネルを見ながら、私は「とりあえずビールかな」と答えた。
それを聞いた壮馬くんは、んふふと楽しそうに微笑みながら、チラリと私の方を見る。


「なかったらハイボールでもいい?」


透き通るような声を発した彼に、私は「やっぱりハイボール」と返答しながらクスリと笑った。


するとタイミングよくエレベーターが停止して、扉がスッと開かれる。
エレベーターを降りた私は、ヒール音をコツコツと鳴らしながら彼の後ろをついていった。


「そまみちゃん、いらっしゃい」


慣れた手つきで扉を開けた彼は、紳士の様に戸を開き待っている。
私はお礼を伝えながら、彼の玄関に入る。

少し広い玄関は、壮馬くんが入って来てもいくらか余裕があった。


「靴、適当なところに置いていいから」


彼の軽く柔らかな声と共に、ガチャリと鍵が閉まる音がした。


お邪魔しますとひと声かけながら、廊下の一番奥にあるリビングを目指す。
パチリとスイッチ音が聞こえると、薄暗かった廊下が暖色の照明に照らされた。


「暗かったでしょ?すぐ付けなくてごめん。」


そう話した彼は、私の背後に擦り寄る。
そしてギュッと後ろから抱きしめられた。


え?と首を後ろに捻ると、ほぼ同じ身長だからか壮馬くんの顔がすぐ傍にある。
そのままの状態で、彼が発した幼女の様なか細い声が、私の鼓膜を震わせた。


「少しだけ部屋を片付けたいから、ここで待っててほしいなぁ」


私は笑みを口角に浮かべながら、待ってるねと伝えた。
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