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夜行列車に跨って

第6章 5shot


「お待たせいたしました。」


新しいコースターの上に、オーロラを置かれる。
私の隣へ移動した彼は、コロネ―ションをオーダーしたようだ。


ガラス音を出さないように、静かに乾杯する。


「美味しいです」


カウンター越しに佇むマスターへ、彼はそっと感想を残す。
私も続けるように、美味しいと発した。


「ありがとうございます」


にっこりしたマスターは、お客さんがいなくなったBOX席を片付けに行った。


「もう少しで日付、変わりますね」


チラリと彼の袖から見えた時計は、シンプルな銀ベルトだった。


「終電、大丈夫?」


手の中で揺れるグラスを眺めながら、「大丈夫じゃないかも…」と告げてみる。
チラリと彼に視線を流すと、目を丸くする彼が見えた。


私はニコリと口角を上げる。
ん?とキョトン顔になった彼の口元は、楽し気に弧を描いていた。


そして、最後の一口を二人で飲み干す。
頭がフワフワと浮ついた私は、まるで毒に侵された様に正常な判断が下せなくなっていた。


「そまみさん。よければどこかで飲み直しませんか?」


空のグラスを置いた彼は、誘うように私の手を握った。


「せっかくの、夜ですし、、?」


私を弄ぶように彼が微笑む。


私はコクリと一度頷いた。


早急に会計を済ませた私達は、行く当てもなく街をさまよい始める。
いつの間にか日付は変わり、雲一つない空にはポツリと満月が浮かんでいた。


「考えてみたら、どこに行こうかノープランでした」


苦々しく笑う彼に、いっそボーリング場でも行こうかと提案する。


「お!楽しそう!」


パッと満面の笑みを浮かべた彼に、スマホで調べてみると伝えた。


しかしながら、近くのボーリング場は生憎どこも空いていない。
インターネットの予約カレンダーは、赤い✕印しか表示しなかった。




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