第4章 3shot
「あ、そまみさん。彼は友人の壮馬。仕事仲間なんです。」
石川さんが、サラリと紹介してくれる。
「はじめまして、斉藤壮馬です。」
石川さんと違い、少し緊張した面持ちで話す彼に、私は何故か親近感を覚えていた。
「そういえば、お二人は一体どんな仕事をしているんですか?」
思い出したように、マスターが質問を投げかけた。
「…仕事、ですか。実は、声優をやらせて頂いてるんです。」
石川さんがニコリと笑った。
「え?!そしたら界人くんと壮馬くんって、有名人なの?」
心底驚いた、という表情のマスターは、2人の顔を何度もキョロキョロと往復していた。
「有名人、なんでしょうか」
恥ずかしそうに斉藤さんが微笑んだ。
今までアニメのストーリーにしか注目していなかった私は、どんなキャラクターを演じたことがあるのか質問する。
「最近だと、ハイキューの山口かな」
「じゃあ、俺は影山だな。実は、さっきまでその役になってたんですよ」
突然好きなアニメの名前が飛び出したことで、「そうなんですか?!」と食い気味に私は返答した。
「そうなんですよ!」
私のセリフを真似て楽しそうに笑う石川さんは、既に頬が紅くなり始めていた。
お酒に弱い方なんだろうか。
「界人くん、さっき収録したCDの公開日いつだっけ?もう公式発表してる?」
「多分、してるんじゃない?」
「そまみさん、良ければ聞いてみて下さいね。」
頬杖をついた斉藤さんに、オススメされる。
私は、もちろんと返した。
そこへ、スマートホンのバイブレーションが一定のリズムで鳴り始めた。