第4章 意外な一面
「ここは…パン屋さん?」
目の前には昭和的な外観をした建物。古ぼけた看板には【ベーカリー山口】と書いてある。
「付き合ってくれない?」と言われてとりあえず悠弥については来たものの、まさかパン屋さんに来るとは思わなかった。しかも瑞希は地元だが、ここにパン屋さんがあったなんて今知ったばかりだ。
「そう!ここのメロンパンは絶品なんだ」
それだけ言うと、悠弥はずんずんお店の中へ入っていく。
瑞希も慌ててその背中を追った。
「わあっ……!」
外観のイメージとは違い、小洒落た雰囲気の店の中は香ばしいパンのにおいでいっぱいになっている。
そして見るからにおいしそうなパンがずらりと並んでいた。
「いらっしゃい……あら、悠弥くんじゃない!その隣はお友達?」
奥からひょっこり顔を出したのは50代くらいのエプロンの似合うおばさんだった。悠弥の隣に立つ瑞希を見て少し驚いた顔をする。
「悠弥くんがお友達を連れて来るなんて珍しいわねぇ…おばさん、サービスしちゃおうっかな!」
「この人が山口さん。夫婦でこのお店をきりもりしているんだ。俺は小さい頃から結構お世話になってて…」
悠弥が耳打ちする。
なるほど、どうりで馴れ馴れしい口調のはずだ。
悠弥はきっと頻繁に来ているのだろう。
「じゃ、何食べる?」
「んー…おすすめで。メロンパンがおいしいんだっけ」
おっけ、と言うと悠弥はメロンパンを二つ注文してくれた。