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その秘密は図書室にて

第3章 歪んだ関係


「ふんふんふーん♪」
「次化学の実験だってのにずいぶん楽しそうね。そんなに好きだったっけ?」
廊下を歩きながら、由香里が怪訝そうな顔で覗きこんでくる。
「それとも、堀口くんとなにかあったのかしらー?最近やたら本持ち歩いてるしねー」
「ななな何故それを!?」
「あ、やっぱり?そうだったの!!」
どうやら由香里に釣られてしまったようだ。瑞希は顔が赤くなるのが分かって俯く。
「…お勧めの本を紹介しあってるの!割と好みも合いそう……って、なにニヤニヤしてるのよーっ!!」
「いや〜男の気配すらない瑞希ちゃんがとうとうねぇ〜、おねーさん嬉しくなっちゃって」
由香里は完全にからかいモードだ。
「もうそうじゃ………あ!」
堀口くんと一宮くん……と数人の女子がこちらのほうに歩いてきていた。
と、途端に由香里の表情が険しくなる。
(うーん、好きならこんな表情するのかな…?)
瑞希は考えこみながら、前から歩いてくる廊下ですれ違った。
「あっ……!!」
2人を囲んでいた女子の1人と由香里の肩がぶつかり、由香里の筆箱が落ちた。
「あ、ごめんなさ〜い」
一応は謝っているが拾ってくれる様子はない。
黙ったまま由香里が拾いに行こうとすると、
瞬がすっと由香里の筆箱を拾い上げた。
「ほらよ、由香里」
(えっ……!?)
一宮くんはなんのためらいもなく由香里と呼んだ。つまり2人は知り合いなのか……。
瑞希は由香里の顔を見ると、険しい表情のままだ。
そしてそのまま瞬の手から筆箱をひったくると、くるりと瞬に背を向けた。
「ゆかっ……」
「由香里!!!」
大声で一瞬動きを止めた由香里の手首を瞬が掴む。
「なあ、由香里…」
「…………離して」
「まだ…あの時のこ」
「離してって言ってるでしょっ!?」
廊下がしん…と静まり返る。瞬がびっくりしたような顔で由香里の手首を解放する。瑞希は息を呑んだ。
(こんな由香里、見たことない…)

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