第4章 本当に私で……いいの?
あなたside
あの日からしばらくの間例の居酒屋には近づいていなかった。
また彼に会うのが怖いから。
推しだった彼の事を遠ざけるなんて、少し前の自分にはありえない事で…。
だけど、そんなある日
散歩がてら家の近所を歩いていると後ろから声をかけられた。
?「あの!!!」
この声は知っている。
だって何年も好きで聞いていたから。
だけど、振り返ってはいけない。
また泣いちゃう…
江「あの、この間はすみませんでした!
僕、宏太朗に言われて気づいたんです。
僕はもし何かあった時に君にまで被害が及んでしまったら…怖くて……それで、僕から遠ざけようとしてた。
でも、決めたんです。何があってもあなたを守ります!だから……」
『だから……?』
ここで初めて私は彼の方を向いた。
いつものようなお茶目でかわいい彼の笑顔は無くて、今まで見たこと無いぐらい真剣な顔だった。
江「……。僕とお付き合いして頂けませんか?」
私はすぐに答えが出せなかった。
どうしてかは自分でも分からない。
こんなに好きな彼から告白してもらえたのに……
気づけば泣いていた。
彼は変装用で身につけていたのであろうマスクを外して私に近づいてきた。
私より25cm以上大きいであろう彼は屈んで涙を拭ってくれた。
そして少し笑って
江「返事はまた今度でいいよ。これ僕の連絡先ね!
あ、L○NEの方が良いのかな(・ω・`*)」
『L○NEで大丈夫ですよ。』
そう言って私たちはL○NEを交換した。
江「ありがとう!
あ、そういえば名前聞いてなかったんだけど、聞いてもいいかな?」
『山本 きぃ…です。』
江「教えてくれてありがとう!きぃちゃん!」
そうだ、私はこの笑顔に惹かれたんだったな。
好きって気持ちはもう変えられない。
去っていこうとする彼の服の裾を摘んで呼び止めた。
『江口さん!、本当に私で良いんですか?』
江「えっ?」
『私なんかよりもっと可愛い人だって声優業界にはいます…よね。それなのに……』
江「顔が可愛いとかそんなの関係ないよ!
僕が好きだ!って思ったんだからそれでいいじゃん!えへ///」
照れくさそうに笑ってそう言ってくれた。