第5章 出会いと再会【原作編(入学)】
中学3年、受験シーズンに入り、クラスが別になった事もあって圧倒的に轟くんとの接触も減った。あの告白以降、正直どういう顔をして会えばいいか分からないし、会わない方がいいだろう。
それに、受験シーズンが終われば晴れ晴れ高校生になり、彼とはお互い接点を持つことはなくなる。悲しいが、こうでもしない限り私の片思いは終われない気がした。
『あっけないな...』
そう呟いた声は一瞬で消えていった。
気持ちを切り替えて、受験のために勉強していた矢先の事だった。リビングの方から大きい物音が聞こえてきて、何事かと思い、そちらへ向かうと、
「ゴホッ!ゴホッ」
『おばあちゃん!!』
苦しみながら倒れているおばあちゃんがそこにいた。携帯を取り出し救急車を呼んで、一緒に搬送先の病院へ向かったが、
「詳しく検査する必要がありますね。」
そういわれ、お医者さんから保護者の方が必要だと言われたため、直ちに海外にいる父に詳しい事情を話して、その後のやり取りは父に譲る事になった。
不安が漂る中、数週間、数か月が経ち、おばあちゃんは大病院へ入院する事になったため、今住んでいる家から引っ越ししなければならない状況になった。ただし、私は受験生という考慮もあってか、正式な引っ越しは1年後になり、彼女は先に入院した。
また、おばあちゃんの入院は、自分の受験にも多く影響された。本来、地元の高校を受験する予定だったが、急遽地元を離れないといけなくなったため、新たに志望校を考え直さないといけなくなった。
新たに暮らす家から近い高校の情報収集と、受験勉強を両方を両立させる必要があり、寝る間も惜しんで受験シーズンを乗り越えようとしていた。
そして見つけた候補の中の一つ。それが「国立雄英高等学校」だった。ヒーローを育成する学校であり、ここから優秀なヒーローになる生徒も多いとのことだ。もちろん、普通科を目指す自分には関係のない話ではあるが、学内施設が充実している点や将来ヒーローに関わる仕事を目指しているならば、最適に他ならない学校だ。
もちろん、優秀な学校であるため競争率も高く、元々無個性な自分は他の人よりアドバンテージが低いので、勉学で勝負するしかないが、目指して損はない。無個性で生まれてしまった私のせめての親孝行だった。