第4章 自覚と決着【過去編】
『轟くん、あなたが好きです』
綺麗な白と赤の髪が風に揺れる。容姿端麗な彼の姿は、背景と共に綺麗に映った。普段は感情表現が見えづらいが、この時は僅かに瞳孔が開いていた。私の告白に驚いているらしい。
ただそれは一瞬の事で、何か考える様子で目を俯いていた。
「‥‥いつからだ?」
『そうだね、自覚したのは中学1年の頃かな、』
「‥‥」
彼の言葉をゆっくり待つ。こんな事急に言われたら驚くのは当然だろう。
自分が無個性だからといって無視せず普通に接してくれる男の子。いつも彼と一緒にいると心地よかった。自分らしくいれた。だから好きになっていた。
もし轟くんも同じ気持ちだったらこんなに嬉しいこともないだろう。
でも──。
「悪い。俺はお前の気持ちには答えられない。今は一つの事しか考えられねぇ。」
『…うん』
彼の返事は即答だった。
ヒーローを目指してる彼にとって、恋愛は二の次の話。それに、クラスメイトの一人として接してくれてただけで、それ以上の感情はないことは、今までの行動からも予想がついていた。
わかっていた。わかった上で告白した。今更それについて悲しむなんてお門違いだ。
『いいの。知ってたし...伝えたかっただけなの』
「...そうか」
ああ優しいな。友達と思ってた人が邪な考えを持っていたなんて軽蔑してくれてもいいのに。最初から最後まで轟くんは轟くんのままだ。たとえ思いが叶わなくても、後々いい思い出だったって片付けられる気がする。
『ありがとう』
「....」
何に対しての『ありがとう』なのか、彼は意味が分からず唖然としていた。わからなくていい。ずっと知らないままでいい。多分これ以上会うこともないだろうから。
『受験お互いがんばろうね』
「....ああ」
『.....それじゃ、私帰るね。』
本当に終わるのは一瞬、伝えようとして考えてた時間よりも、返答の時間の方がもっと早い。あっという間だった。彼は私を気遣って送ろうとしていたが、
『大丈夫一人で行けるから、』
断る事で自分に精一杯だった。覚悟してたとはいえ、今は彼と一緒にいる事自体が辛く感じてしまった。だから、
私はその場から逃げるように、振り返ることなく立ち去っていた。
ーさようなら、初恋
ー幸せな時間をありがとう
私の初恋はこうして終わった。