第11章 逃走と真実【原作編(合宿/神野)】
忘れようと思っても簡単に忘れてくれないらしい。
『‥‥後、もう少し、』
後1,2日ぐらいで退院できる。
そうすれば、学校生活も始まる。
このモヤモヤした気持ちもなくなってくれるはずだ。
ー君は個性持ちになる事に興味はないかい?
‥‥やめて、
ーだから、もし無個性であることがキツイのであれば、いくらでも手を貸す事ができるのさ。
‥‥やめて、って
ー君が個性持ちになるだけで、家族も喜ぶし、なんなら離れてしまった家族を再び呼び寄せるキッカケになるかもしれない。
‥‥やめてっ!!
頭がぐちゃぐちゃになりそうで、拳に力が入りそうになっていた時、だった。
「‥‥一条、」
その声色に体が反応し、例の事が全て吹っ飛んだ。
彼だってすぐわかってしまった。
『‥‥あ、』
私はなんて声を聞けばいいか分からなかった。
とりあえず、恐る恐る彼の顔の方を振り向くと、少しだけ驚いた。
縁日で会った以来になる彼は、頼もしい雰囲気をまとっていた。
きっと、合宿だったり、ヴィラン襲撃があったり、激動の時を過ごしたからだろう。
『‥‥‥‥』
「‥‥‥‥」
お互い無言になる。
ちらっと、視線を轟くんに向けると珍しく戸惑っているような雰囲気を醸し出していた。
そして、何か決心したかのように言葉を発した。
「‥‥入っていいか?」
『‥‥うん、』
彼は、ゆっくりとベッドの近くへやってきた。
『‥‥大変、だったね。』
「それはお前もだろ。」
ヴィラン襲撃に、爆豪くん誘拐。オールマイトの引退。正直私よりも大変だったと思う。
「‥‥わりぃ。」
『‥‥え?』
「お前とどう関わっていくか、まだ決まってないまま、お前に会いに来たから。」
『‥‥あ、』
そう、だった。
ー夏休みが終わった後、ニ学期が始まった頃、それまでに答えを出す。」
ー‥‥答え、って
ーお前を傷つけないで、これからも関わっていく方法を探したい。
縁日でそんなやり取りがあった事を今更ながら思い出した。
でも、正直、お互い大変な事があったし、ここで轟くんに会わない等の話をするのはお角違いだろう。
咎める気にもなれなかった。
‥‥それに、
‥‥
その先の事を考えて呆れて苦笑いをした。
何を考えているの、私は、
顔を見れてうれしいだなんて、