第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
※一条視点
私は車がいなくなるまでその場に立ち尽くしていた。
ーお前は気にしなくてもいい。これは俺が勝手にそうしたいって思ってやってることだ。
ーそれにお前に納得してもらえなかったら意味ねぇだろ。俺はお前に苦しい思いをさせたいわけじゃねぇんだ。
ー今日、短い時間だけど会えて嬉しかった
どうして、だろう
その言葉一つ一つが優しくて辛かった。
私は何も答えられない。彼の願いに応えられないことを知っていたからだ。
もう一度自分と関わりたいと思う彼の気持ちに、
『はは、』
呆れて笑いと同時に涙が滲む。
ねぇ、轟くん
私はもういいんだよ。充分貰ったから、轟くんとの楽しい日々を
だから、もう忘れて、
轟くんに相応しいもっと輝きあふれる世界へ行ってよ。
私が望んでいるのはそれだけ、なの。
(、なのに)
自分を保とうして「会わない」と決断したことさえも崩れていく。
会っても苦しくて、会わなくても苦しくて、
どこにもいけなくて、ただ虚しい。八方塞がりだ。
その理由はたった一つしかないだろう。
でも、何が正解なのか、もうわからない。
何が私にとって幸せなのか。わからない。
欲望と理想と諦めの感情が巡って、頭がぐらぐらした。
今はもう何もかも苦しい。
『もう、嫌、』
自分を抱きしめながら、涙を流した。
お願いします。神様、
この感情からもう私を解放してください。