第10章 話し合いと繋ぎ【夏祭り】
夏の暑い頃、
もうすぐ夏休みに突入しようとし、本格的に1学期が終わろうとしていた。夏合宿でまた忙しくなるのが目に見えているが、雄英に入学したのが先日みたいに感じているのに、月日が速く感じる。
彼女とはあの日以降会えていない。正確にいえば、会おうとしても、避けられていた。たまたまアイツとすれ違った際に、こちらに気づくと、明らかに視線を避けようとしていたのが何よりの証拠だった。
「もう会わない」と、そう告げた彼女は本気なのだろう。
(………)
あんな形で終わる事が本当に良かったのだろうか?そんなモヤモヤだけが募っていく。でも、本人がそれで納得しようとしている以上、解決策が見つかりそうもなかった。
「轟くん、どうしたの?」
『緑谷か、‥‥悪い。顔に出てたか?』
「あ、いや!そこまであからさまにってわけじゃないけど、たまに考え込んでるみたいだったから」
『‥‥そうか』
どうやら顔に出たらしい。情けない話だが、これ以上の道が見えないのもあってか、胸の内を晴らすかのように口を開いていた。
『‥‥一条にもう関わらねぇって言われた。』
「…‥え?!一条さんって…‥確か轟くんの幼馴染の、」
『…‥ああ、』
「そ、そっか、それは、深刻だね」
明らかに動揺している緑谷は何を話しかけるか迷っているみたいだった。
「緑谷なら、どうする?」
「え?ぼ、僕?!」
緑谷はしばらくすると、真剣な面持ちで答える。
「すごく悩むけど、やっぱりちゃんと話したいなって思うよ。それで和解できるならそれに越したことはないしね。」
『…………』
緑谷は明言はせず、自分なりに考えたことを伝えようとしていた。
「こればかりは正解がないから何ともいえないけど、でも、轟くんが納得して出した答えでいいんじゃないかな?」
『........納得して、』
「って、僕が言えた義理じゃないんだけど....」
納得して出した答え、か。
どうしてもアイツの気持ちを考えると納得しないといけないような気がしていた。あの時のように苦しむ姿を見るのは嫌だったからだ。
でも、そうすれば、一生この胸のモヤモヤを解消する方法は訪れないということになる。それは絶対ダメだ。
ならば、
俺なりの答えを見つけ出したい。後悔しないためにも。