第8章 距離感と興味【原作編(職場体験)】
その後急いで、緊急コールを押し、看護師や医者の人が急いで病室へやってきた。薬を吸入してもらうとの事で、俺はその場を離れるのを余儀なくされた。
医者から連絡が後にいくとは思ったが、とりあえず彼女の身内である一条に伝えるべきと考え、メッセージを残しておいた。
アイツはアイツで考え事をしたいと言っていたので、正直送るべきか迷ったが、目の前で身内の人が倒れている事を報告しないという選択肢は考えられなかった。
それほど、その光景は、なかなか衝撃的だった。
=========
※一条視点
昨日の父の話が整理できないままでいた私が、轟くんから届いたメッセージを開いた時は心臓が止まるかと思った。
彼からそんなメールが届いたのもびっくりなのに、おばあちゃんの事で余計に心は落ち着かなかった。
(‥‥っ、)
最初入院してからこれまで、回復とまではいかなくても、症状が落ち着いてきたと思っていたのに‥‥
万が一の事が、と考えると、悪い想像が頭を過ってしまう。その気持ちを払拭するためにも、早く病院へ行かなければと思った。
病室へ赴こうとする際、付近で待機していた轟くんの存在に一瞬に気づいた。
『…容態、は?』
「…今医者が対応しているから、しばらく待った方がいい。」
『そ、う…』
「休憩室に行くか。」
表情は変わらず冷静に話す彼は、そう言って休憩室に先んじで先頭へ進んでいく。少しではあるがおかげで落ち着きを取り戻していた。
ソファーへ座ると、自分の隣に彼も座る。その状況に一瞬間を取るべきかと思ったが、正直それを考えてる程の余裕はなかった。
「‥‥大丈夫か、」
『え?』
「顔色悪い。」
『私は…大丈夫、轟くんこそ、傷、大丈夫なの?』
「…別に大した怪我じゃねぇ」
『…そう、なんだ…』
今日の朝、ステインの逮捕の記事を見た際、轟くんの名前が載っていたこともあって、大変だったことは知っていたが、メッセージが送られるまで、まさか彼が祖母と同じ病院で入院しているとは思っていなかった。
正直自分の祖母についてどう知ったのか経緯も含め、色々気になる所はあったが、今はおばあちゃんの安否が心配だった。
(…おばあ、ちゃん、)
ただ祈るように手を握り締めてる自分の横で、無言のまま傍にいる轟くんの存在がいた。