第7章 振り出しと関係【日常編】
(それにしても、あんな風にありがとうって言われるなんて思わなかったな‥‥)
面と向かって感謝されるのは、やはり嬉しい。できる事が限られる自分が、彼にとって救いに少しでもなれたのなら、それは光栄な事だと思う。
でも、
(…‥やっぱり、もう関わることはなくなる、かな、)
今日彼に会って改めて感じたことだ。
体育祭での不安定で危うい轟くんは、もうそこにいなかった。
今後は自分の目標のために進むことになるだろう。ヒーロー科は特に高い結果を求められるクラスだ。普通科の私のレベルでは到底たどり着けないほどの特訓をし続け、自分の個性を磨き上げるための時間を有することになるだろう。
(…‥‥…)
ああ、やめよう。
切り替え、切り替え。轟くんが前に進むことができた。それでもういいじゃないか、これ以上グズグズ余計な事を考えて、気持ちをかき乱すのはやめよう。
いい加減に前に進まなくては、
『‥‥よし!』
気持ちを整理して…‥、
「おい、女」
『う、うわ!?』
急に肩を叩かれ、びっくりして後ろを振り返ると、黒いジャケットを着た男性がいた。
「‥‥落ちてたぞ」
『え、っあ!すみません』
どうやら自分はあの手紙を道端に落としてしまったらしい。私のしたことが…考えごとに夢中になりすぎていた。例の男性から受け取った。
『大事なものだったんです。助かりました』
「…‥へぇ、」
こちらをじっと見つめる男性の瞳は何を思っているのか分からなかった。
「‥‥せいぜい大事にするんだな、」
『‥‥は、はい?ありがとうございました。』
一瞬の視線に違和感を感じたが、それ以上何も言われる事もなくその場を去っていく。
(何だったんだろう…)
疑問が残ったが、疑うのは手助けしてくれた人に対して失礼だ。
手紙を丁寧にポケットにしまって、歩き始めた。
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??視点
「‥‥しょうと、ねぇ…‥」
たまたま拾ったもんに、面白いことが書かれていた。偶然にも自分が知っている相手宛ての手紙だ。
「‥‥後で調べてみるか、」
アイツを殺す計画は考えていたが、その上でコイツは利用する価値がありそうだな。
「…‥ククッ、面白くなりそうだな、」
なあ‥‥? 焦凍、