第5章 突撃シュリンプ!【Floyd】
「小エビちゃ」
バッタン、と彼女が出ていった後の扉が閉まった。
フロイドは追いかけなかった。
え?なんで?
なんでまたオレから逃げんの?
小エビちゃん、なんで?
「おや…振られてしまいましたねぇ」
キッチンの影に隠れていたジェイドと、その後ろからアズールが出てくる。
フロイドは、無言で彼女が飲み干したグラスを見つめる。
そして、
「えぇ〜〜〜〜なんでぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「五月蝿いですフロイド。全くお前は…」
「小エビちゃんオレのこと好きってぇぇぇぇ」
ジェイドが何とかフロイドを鎮め、ソファに座らせる。
アズールは適当に飲み物を3人分出した。
「…さて、フロイドが監督生さんに振られた件についてですが」
「振られてねーし」
「ごめんなさい、と言われ逃げられたでしょう」
「小エビちゃんオレのこと好きだってゆったし」
「…。」
「…。」
フロイドはグズ、と鼻を啜った。
ちょっとだけ泣いているらしい。
「てかアズール、あの"薬"全然効かねーじゃん!小エビちゃんドリンク全部飲んだのにぃ」
「いいえ!僕の調合した魔法薬が効かない筈がありません。」
…実は、あの時。
フロイドはキッチンでスペシャルドリンクにアズールが作った"惚れ薬"を仕込んでいたのだった。
魔法薬は基本とても不味いが、惚れ薬の類は歯に染み込むように甘い。アズールができるだけ飲めるように味を変え、ドリンクに混ぜて提供したがそれでも監督生は相当甘いと思ったはずだ。
「確かに。監督生さんはフロイドの見守る中、スペシャルドリンクを最後まで飲みきったというのに顔色も変わりませんでしたね。挙句振られてますし。」
「いちいち振られたって言うのやめてくんない。」
「可能性は、ひとつ…監督生さんは既にフロイドに惚れていたんじゃありませんか?」
「え!」