第2章 強欲スネーク!【Jamil】
「ああそういえば、こんな話を聞いたことがあるな。あるところに、一匹の蛇と一人の女性がいたんだ。」
「蛇?」
「蛇は体長2m越えの大きな蛇だったっけな。蛇と女性は一緒に暮らしていた。蛇は眠る時必ず、彼女に巻き付いて寄り添うようにしていたそうだ。」
「ええ!すごいですね…」
「彼女は蛇を可愛がっていたんだが、ある日突然、蛇は食事を一切取らなくなってしまった。さて、何でだろうな?」
「うーん。蛇が恋をした、とか?女の人が好きになってしまって食事も喉を通らなくなってしまった…みたいな。」
耳元でフッ、と笑う声が聞こえる。
「ハズレだ。本当の答えは…」
ジャミルの腕が這うように動き、髪を撫でられる。
「蛇は食事を絶つことで胃の中を空にしていたんだ。目の前の獲物をすべて消化できるようにな。」
「え…?」
目の前?獲物?
それじゃあ、まるで…。
ジャミルの腕の力は強くなる。
まるで蛇に締められるみたいだった。
そうして、彼は耳元で囁く。
「蛇は毎日女に巻き付き、どれくらい腹を空かせればいいかを測っていた」
「ひぇ、」
「ほら、こんな風に」
彼の長い指が掌に絡まってくる。
何だかゾクッとした。
私もいつか食べられてしまうのかしら、なんて。
「生憎俺は空腹でね」
時間をかけてゆっくりと、丸呑みされるのだろうか。
それかガブッとひと噛みで、全身に毒が回ったように支配されてしまうのかも。
それでも構わないわ。
「流石は俺が磨き上げた原石。今の君はとても美しいよ。…え?もちろん本心さ」
手の甲に彼がチュ、と口づけをする。
「美しい砂漠の花は最強の男の隣が相応しい、そう思うだろう?」
怪しげに彼がほほ笑んだ。
そこから先を見ていたのは、熱砂の星たちのみだった。…
END.