第2章 強欲スネーク!【Jamil】
「そう怒るな。俺が君と二人きりになる為に、どれだけ面倒な根回しをしてきたことか。」
スルリと彼の長い腕が伸びてきて、吸い寄せられるように後ろから抱きしめられた。
「今ならカリムも、グリムも、寮生たちもない。…もう俺は遠慮しない」
「ジャ、ミルせんぱい、」
「ここは目に見えているよりずっと危険だ。カリムならまだしも、君を巻き込む訳にはいかない」
「え、」
「過去に俺をカリムから引き剥がして、その隙にカリムを襲いに来る奴らがいてな。勿論全員纏めて俺がコテンパンにしたが。」
「すごい」
「だがもし君が関わっていれば話は別になるだろう。君の存在を知られることは手の内を明かすことに近しいと思っていた。」
「…だから、内緒にしたんですね」
「そうなるな。」
顔が真っ赤になるのを感じた。
全部私の勘違いだったんだ。
彼は私を守るために隠そうとしていたんだ。
それなのに、勝手に悪い方に考えて、勝手に臍を曲げて。
子どもだって思われたに違いないわ。
「ごめんなさい…。」
「俺がこの程度で怒ると思ったか?」
「でも、私、ジャミル先輩」
「気にしなくていい。だが…」
耳の後ろから、ジャミル先輩の声が響く。
こんなに近くで声を聞いたのは初めてだった。
「落とし前を付けてくれるのなら、ひとつ言うことを聞いてもらおう。」
「なんなりと」
「…そうだな。このままでいろ。俺が良いと言うまで。」
ギュウ、と彼の手が監督生の体を締め付けた。
「はい」
心臓が爆発するくらいにドキドキしたけれど、幸せだった。