【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第3章 3分の1でも選ぶとは限らない
「へたくそだったらごめんね」
「そんなんトス出来ん俺が悪い」
「いやいや、侑くん上手じゃん」
「俺はAでもBでも、CでもDパスでも全部トスして打たせなあかんねん。そんくらいの気持ちでやらんと。本番で百二〇パーセントは出へんねん」
カッコつけて言ったわけやない。本心や。それやのに水田さんの頬がどんどんと緩んでいってついには押さえこんでいた声が漏れ出した。
「フフ、待って.........ちがう、違うの、」
口元を押さえて突然水田さんが笑いだす。
「それ、弟にも言ったでしょ」
同じことキメ顔で言ってた。と付け加え、さらにツボに入ったかのように再び笑いだす。
「なんや、俺のおらんとこでえらいイキっとるやんけ」
俺が弟のマネをしながら同じセリフを言うと、「死ぬ、死ぬ!」と大げさに腹を抱えて足をふらつかせた。
正直言って、水田さんはあんまり明るい方じゃない。第一印象は大人しいけど、存在感はある人や。俺も最初は、こいつ絶対友達いない奴やんって思うとった。けど全然違ったわ。フラットで、自由で、気まぐれで、冗談が通じて、意外と協調性がある。けど群れたりはせえへん。ただ単純にそれだけやった。
例えば俺が治を愚痴っても、自分が思わないことは絶対言わへんし、けど意見は否定しない。ただ相手の言いたいことをひたすら聞いて頷いてくれる感じ。それに、悪口言っとるとこも、言われてるとこも見たことないし、聞いたこともあらへん。そら放課後女子達が水田さんとおしゃべりしてる理由もわかるで。