【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第3章 3分の1でも選ぶとは限らない
朝から汗を流さなきゃいけないって、正直だるい。朝も自主練にしてくれないかと朝部活中何億回思っただろう。
「角名、今のサーブアウトやで。ちゃんと一本一本丁寧にやり」
「......はい」
体育館中に散らばるボールのひとつが足元に転がってきたのを拾い上げる。
(正直今日はバレーの気分じゃないな)
ていうかそんなことより、さっきから水田さんが体育館の正面扉からその場を行ったり来たりしてるのが気になり過ぎてサーブ練どころじゃない。いっそのこと気付かなければよかったとはこのことだ。こういうことになると水田さんは優柔不断になり過ぎる。
あぁ、なんかだんだんイライラしてきた。まあサボれるし、猫被って行ってみるか。そう思い顧問に同級生が、と口実を付けてサーブ練を抜け出し、体育館の正面扉から外に顔だけを出した。扉の横には、先程までうろうろしていたはずがあからさまに壁に貼られたポスターを見てるふりをしている水田さんがいる。脇に挟んでいるのは妙に見覚えのある柄のタオル。治がこの前使ってたタオルだ。.........いや、確かそれ一昨日侑も使ってたな。どっちだろう。
「おい」
「...!?、なんだ角名くんか。びっくりさせないでよ」
「さっきからそこでうろうろしてるの丸見え」
「え、嘘!? いつから」
「そこの段差で躓いてた時から」
「最初っからじゃん!」
わなわなと顔を覆いながら項垂れる。そのタオルの件? と、問いかけると「あー、うん。まあね」と体育館の中へ視線を向けた。
「用があるのは侑くんなんだけど、わざわざクラス行くのもちょっと...って思って.........……」
畳んでいたフェイスタオルを広げ、目から下を隠すようにしながら俺に広げて見せる。「たんだけど、」と付け足して俺にアイコンタクトで横目に視線を送った。水田さんの言いたいことは、とっくに解っている。