【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい
いつもの雰囲気と違うせいなのか、全く水田さんと話している感覚じゃなかった。
ていうか、絶対どうでもいいわけないやろ。もっと食い気味にいつもみたく口止めしてこいや。じゃないとこっちの気が狂うねん。
だからいっそのこと踏み入ってみようと思った。水田さんに止められるまで。
「てか、あいつ誰なん?」
「小学校と中学生の同級生」
「えらい揉めとったな」
「昔の話を掘り出されたの。それをいいよられてた」
「バラすぞ的な?」
「大体合ってる」
あれ、意外とすんなり話とるやんけ。もしかしてもう聞かれて自暴自棄になってたりするんか? いや、俺話聞いてないって言うたよな。じゃあ話さなければいい話やし、もし俺が嘘ついてたとしても口止めすればそっちの方が話が早い。水田さんに限って、それは無さすぎるやろ。
「ていうか俺、割り込んで良かったん?」
「うん、……助かった」
「……………そんな嫌なヤツなんや」
「…………うん」
―――大嫌い。
小さな声だった。
それなのに自分に言われてると錯覚し、一瞬虫唾が走った。
強い憎悪を噛み絞めて珍しく感情的になっている。今までで一番、心の底から言ってるような気がした。
「小学校の時、噂を流されたの。私があいつのこと好きだって。でも実際は嘘でただの噂なの。誰が流したのか知らないけど他にもいろいろあった。私の名前の手紙が他の男子の下駄箱に入っていたり。男女関係なく、私が噂を流したとか、秘密を言ったとか。もう散々だった――」
ふつふつと吐き出すように語り始める水田さんに、俺は黙って聞いていた。
中学に上がってクラス替えがあったけど、運悪く元凶であるあいつとクラスがまた同じになったらしい。だから女子とはある程度信用できる人だけと喋って、男子とは一切喋らず過ごしたらしい。喋らなければまた変な誤解が生まれることはない、そう言っていた。相当重症やった。でも……
「まぁ、俺には関係ないことやね」
ある程度ひと区切りつくと、そう一息つきながら吐き捨てた。「そうだね、」とまた背後から小さな声がした。
正直俺には関係ないし、俺の身内でもあるまいし、あんな奴どうだってええんや。