【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
「お姉さん」
当然そう口にする侑くん。ここからは、客と店員。そんな境界線を軽く引かれた感じ。
持っていたトングを自分に向けて首を傾げるとどうやら私みたい。まあ他に誰かいるんだって話なんだけど。
「おねぇさんのおすすめは何? 買ってくわ、悪いことしちゃったしな。」
「…あそこにある塩パン。すごくおいしいの。私はあのパンが一番好き。……試食する?」
「え、できるん?」
「いいよ、まだ食べたことないの?」
「おん」
トレーとトングを台所に戻しに行ってからビニール手袋を付け、店には並べることが出来ない訳あり用のトレーから塩パンを手に取り端をちぎった。レジ前まで来ていた侑くんに差し出せば侑くんはそのまま屈んで私の手から直接塩パンを口に運んだ。
周りに客もおらず、店長は売り上げを集計しておりキッチンにもいなかったため店内は二人っきりの状態だった。一歩間違えてこれ誰かに見られてたら社会的にも侑くん好きな子達にも殺されてたな確実に。
「うん、、超うまいな」
「でしょ? 表面はカリカリ、中はバターが効いてほんのり甘くてふわふわなの。甘さは林檎で加えてるから糖質も低い。私は、この店ではあの塩パンが一番美味しいと思う」
「…そのマスク、ええな」
「…え?」
すると突然、侑くんが指を差したのは私の口元に身に付けていた透明なフィルターで加工されたマスクだった。