第2章 拝啓、ロボットさんへ【イグゼキュター】
『並走すなぁあああ!!!』
そう叫んだのは数分前の事。
諦めた私は、一旦地下牢に行くのをやめ、呪いの装備を寄越してきたドクターに直談判することを決めてやって来た。
「私に対する嫌がらせなんですよね?」
そう盛大に息を切らしたまま言ったら、ドクターは私たちが入室してからずっと堪えていた笑いを爆発させて大笑いし始めた。
「笑ってんじゃないんですよ!!!」
「いやっ…ははは!!私はっ…君が心配でだね…うっ…ふふふふ…」
「ムカつく笑いやめません!!?」
ついに資料で溢れる自分のデスクを叩いて笑いだしたドクターにいい加減頭のどこかの血管が切れそうだ。
「あー……一年分笑った気がするな…」
「ドークーターァー…?」
「はは。そんな怖い顔するな、さくら。本当に私は君が心配でイグゼキュターに護衛を任せたんだ。彼はとても腕が立つぞ。私が保障する」
「う…」
ご厚意だ。ご厚意。それを無碍にしては良心が痛む。そう言うと黙るのをわかっていてドクターはそう言っているのだろうが…言い返せずに大きく溜息を吐いた。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。これでさくらは24時間快適な毎日を送れるぞ」
「コンビニか何かかな?」
思わず鼻で笑ったが、コンビニと言ってもこの世界に通じるかわからなかったため、すぐに声を荒らげて反論する。
「いやいやいやいや!!プライベート!!私のプライベートは!?尊重していただいてほしいなって!!」
「そんなの無いに等しいだろう?なぁ、イグゼキュター?」
ドクターは私の背後に目を向けるや否や、クツクツと笑う。
「…報告書では、さくらは起きている時間はほぼロドスを徘徊するか、朝昼夜のトレーニングに徹するか、レユニオン兵との談話を楽しむか…その3通りとありました」
「誰だよその雑な報告書書いたの!絞めてやるうううう!私にもやることあるわ!」
「へえ?例えば?」
「うっ…」
楽しそうにドクターが聞いた途端、言葉に詰まった。それは無い、と言っているようなもので、ドクターはフードの中でまた悪戯な笑いを響かせて私を見た。
「まぁ本当に心配なのだよ。さくらを頼むぞ、イグゼキュター」
「ご命令通りに」
「うわぁああ……」
こうして、ロボットさんとの日常が明けたのだった。