第4章 あの子のことが好きな君を殺す【スチュワード】
彼女が僕だけを選ばなかった。
最初こそ笑顔を繕えていたものの、アドナキエルと手を繋いでその場を去って行ったその事実が信じられなくて、一人残された廊下で膝から崩れた。
一体僕の何が悪かった?何がアイツより好かれなかった?
「(あぁ…僕の大事なものが、奪われて、消えていく)」
目の前に見えた星空の一つが爆発して消えてもう二度と見えなくなるように、大事なものが消えていく気がした。
「(悲し、いなぁ…)」
初めての失恋。
ポロポロ、と勝手に出てくる涙で床を汚しながら嗚咽を洩らす。悲しい気持ちが支配していく。散々泣き散らしても、もう慰めてくれるだろう大事な人は親友の手の中にいる。
すると、ふつふつと悲哀とは別の感情が浮かんできて顔を上げる。
「(諦められない…きっと、この先ない…こんなに人を好きになること…)」
それは、とてもイケナイこと。倫理に反していること。だけどそれを犯してまで手に入れたいものがあった。
「(僕のもの…僕だけのものに…)」
手の甲で目元を拭い、立ち上がってその足で彼女の部屋へ向かった。