第3章 あの子のことが好きな君を殺す【アドナキエル】
親友が、好きな人の恋人になった。
好きな人が、親友の恋人になった。
俺だけは選ばれなかった。
人を好きになったのなんて初めてで、絶対に物にしたいって思っていたのに。
俺だけ、選ばれなかった。
「(どうして?)」
初めに湧いてきたのは何故という疑問だった。
過ごす時間は圧倒的に自分の方が多かったし、その頬を染めさせる回数も勝っている。
だけど彼女は選ばなかった。どうせなら俺も選んでくれれば良かったのに。
「(俺が嫌い?俺のどこが嫌だった?)」
考えても、機械のように単純ではない人間の行動はわからないまま。
気分は驚くほど失意に落ちていく。今日も楽しそうな二人を後ろから眺めてモヤモヤとするばかり。
まだ諦められない。俺だけのものにしたい。俺だけしか考えられないようにしたい。
どうしたらこっちを見てくれるだろう。話なんか今更できないだろうし。あぁ…
「(奪っちゃえばいいんだ)」
とても簡単なことを思いついた、そんな深夜1時。