第2章 拝啓、ロボットさんへ【イグゼキュター】
「…珍しいことが続くな、イグゼキュター」
ドクターの声が静かな廊下に響いた。彼は近くの椅子に前のめりで腰かけ、地面を見ている。
その隣では、イグゼキュターがいつもと変わりない立ち振る舞いで頭を下げていた。
その白い服には赤い血が所々に染みついていた。
「申し訳ありません」
「…私の采配ミスだ。気にすることはない。…だが、いつもは常に周りを警戒するお前が、ミスしたとなると少し気がかりでな」
「…」
「…無事なさくらの顔を見てホッとしたか?」
びくり、と。まるで図星だと言わんばかりに黒い羽と体が揺れた。
ドクターは嘲笑すると、何度も頷いて未だ頭を上げようとしないイグゼキュターの肩を握った。
「そうか…お前が他者を知ろうとするのは初めてだな。良いことだ。頭を上げろ」
そう言ってドクターはそっと肩を押した。言われた通りにゆっくりと頭を上げたイグゼキュターの視線は地面に注がれていた。
「…ドクター、私は」
「うん?」
「…私は、どこかおかしいのでしょうか」
ドクターは口角を少し上げ、眉をハの字にして真摯に聞き返した。