第11章 過去
「お前の睡眠障害っていうのはその頃からなのか?」
「うん。まぁ、父さんが死ぬ前からその兆候はあった。でも、父さんに会えない。士郎とアツヤと連絡が取れない。って思うとどんどん苦しくなって息ができなくなっていった。辛くて、起きてるといろいろ考えちゃうから寝ようって思うようにもなった。サッカーをやってるのが母さんに見つかるとまた殴られるし、母さんの寝てる時間にサッカーやろうって思うと、じゃあ昼間のうちから寝てなくちゃ夜起きれない、って思った。それに、俺の部屋には陽の光が差し込まないから時間の感覚は完全に時計のみなんだ。それも俺の睡眠リズムが崩れていく原因だったんじゃないかって医者が言ってた。」
「そんな状況なのにどうして中学に住めたんだ?許してくれたのか?」
「交換条件だよ。母さんは交換条件で自分が有利になることなら聞いてくれる。だから俺は『中学を卒業したら母さんの言う通りに生きる』代わりに『中学卒業までの自由』を貰ったんだ。あ、これ他のみんなには内緒な。鬼道だから話したんだから。」
「おい、待て。それってつまり、中学卒業したらまたその監禁生活に戻るってことか?」
「まぁ、そうなるな。だから俺は今のうちにやりたいことたくさんやっておこうと思って。」
「できてるのか?宇宙人と戦ってばっかりじゃないか。もっと他にあるだろ?」
椿はうーん、と考えてから答えた。
「ないな。俺はサッカーがやりたいんだ。楽しいサッカーが。みんなとやるサッカーは楽しいし、士郎もいる。最高だよ。人生悔いなし!って感じ。」
鬼道は、ここまで笑って言い切る椿がすごいと思った。