第11章 過去
少しすると、椿が目を覚ました。
流した涙が乾いて目ヤニがたまり、上手く目を開けられないでいる。
「北条、大丈夫か?」
「え?鬼道?」
やっと目を開けた椿は鬼道の方を見た。
「お前の言ってた言葉の意味、やっとわかった。北条、お前はアツヤに嫌われているのか?」
「え?あぁ、大阪でのやつか。………そうだな。士郎は昔から『きーくん、遊ぼう』とか、『勉強教えて』とか言って俺のところに来てくれてた。友達とかいなくて、いつも1人ぼっちだった俺に唯一普通に話しかけてくれるのが士郎だったんだ。でも、アツヤは違った。同じ部屋にはいるけど、俺のことをいつも睨んでて。多分、兄ちゃんを取られた気分だったんだろうなって今なら思うけど、人とあんまり関わったことのない俺にとって、アツヤから向けられるその目は俺を嫌ってるように見えたんだ。実際、アツヤは俺にいつも『うぜぇ、近寄んな』って言ってたしな。」
「それでも北条はアツヤのことも大切なんだろ?」
「ふふ、そうだな。うん。」
椿は少しそう笑ってから続けた。
「だって、何も知らない俺に全部教えてくれたのは士郎とアツヤだから。うざいとか言いながらもアツヤは俺の質問に答えてくれた。」
「何も知らない?北条がか?」