第11章 過去
吹雪は病院へと運ばれた。
吹雪の病室で話をしていると、春奈が口を開いた。
「あの!吹雪先輩、本当にボール取りに行っただけなんでしょうか?」
みんな春奈の声に耳を傾ける。
「私、少し怖かったんです。あの時の先輩の顔。」
みんなも見たことのない顔だった。
イプシロン戦の時もそうだった。
椿は耐えられなくなり病室を出たかったが、頑張って耐え、病室の端へ移動した。
「実は俺、イプシロン戦のあと吹雪に聞かれたんだ。『僕、変じゃなかった?』って。でも俺、なんか上手く答えられなくて。もしかしたら吹雪のやつ、相当悩んでたのかな?」
「監督や北条は何か知ってるんじゃないんですか?」
鬼道が言った。
もう隠せないと思ったのか、瞳子監督はアツヤのことを話し始めた。
椿は病室の端で昔士郎とアツヤと3人で撮った写真を見ながら話を聞いていた。
「吹雪くんには弟がいたの。アツヤくんといって、ジュニアチームで吹雪くんと一緒にサッカーをやっていた。兄がボールを奪って、弟がシュートを決める。完璧なディフェンスフォワードコンビだった。でもある日、事故が起きた。サッカーの試合が終わって車で家に帰る途中、雪崩に。運良く車から放り出された吹雪くんは助かったけど、アツヤくんとご両親は…。そして、それ以来吹雪くんの中にアツヤくんの人格が生まれた。吹雪くんの中には2人の人格が存在するのよ。」
「それじゃ、もしかしてエターナルブリザードは、」
「アツヤくんの必殺技。」
「つまり、エターナルブリザードを打つ時の吹雪はアツヤになってたってことか。」
2つの人格を使い分けることはとても難しい。
「だから、吹雪くんはエイリア学園との過酷な戦いで、その微妙な心のバランスが崩れてしまったのかもしれない。」
じゃあなぜ吹雪をチームに入れたのか。エイリア学園に勝てれば吹雪はどうなってもいいのか?
秋の言葉に監督はそれが私の使命と言った。