第9章 大阪にて…
大阪への道中、昼食のためサービスエリアに寄った。
一之瀬は土門と共に買い物をしていた時、後ろから風丸に声をかけられた。
「風丸?どうしたんだ?」
「ちょっと2人に相談したいことがあって。あんまり人に聞かれたくないから移動しよう。」
3人はサービスエリアの裏手に来た。
「それで、相談って?」
「北条のことなんだが、あいつは自分のことを女として見られることを嫌ってるよな?」
「「うん。」」
「ただ、その。いつもキャラバンで隣の席で眠る北条のことをどうしても男として見れないんだ。その、初めてだからよくわかんないんだけど、多分、好きなんだと思うんだ。」
風丸の告白に一之瀬も土門も開いた口が塞がらない。
確かに、椿が女だと分かった後にあのレアものの笑顔を見るとキュンとしてしまうのはわかる。でも、一之瀬は秋のことが好きだし、土門も椿の性別を知ったばかりでそんなことあまり考えていなかった。
ただ、風丸の気持ちがわからないわけではないため、否定はできない。でも、椿のことを考えるとあまり良くない気もする。
さて、どうするか。
「風丸はどうしたいんだ?」
「え?」
「その気持ちを北条に伝えるのか。それとも今のまま、お世話係の立場を続けるのか。」
一之瀬は少しきつめの言い方をした。そうすることで風丸の気持ちを試したのだ。
「それを悩んでるんだ。多分北条は、俺が女として見てるとか知ったら俺から離れていくような気がする。今の距離感はなくなる。ただ、伝えたら北条が俺のことを男として見てくれるかもしれないっていう期待もある。」
「ダメだよ。」
風丸がそう言い終えると、後ろから声がした。
風丸が振り向かとそこには吹雪が1人で立っていた。