第9章 大阪にて…
「お前、聞いてたのか?」
土門が問いかけると吹雪は頷いた。
「きーくんはダメ。絶対ダメ。」
「どういうことだ?」
「ダメだからダメなんだよ。きーくんのことを女の子としてみたら、きーくんは崩壊するんだ。」
吹雪はそう言うと、少し辛そうに下を向いた。
「崩壊する?」
「きーくんのお母さんはね、きーくんを男の子として育てたくせに『せっかく娘がいるんだから』って言って、女の子の服装をさせてた時期があるんだ。その頃からきーくんはおかしくなり始めたんだよ。自分が女か男かわかんなくなっちゃったんだって。だからきーくんは自分は男だって自分に言い聞かせてるんだ。それなのに周りが女の子扱いしちゃったらきーくんの努力が無駄でしょ?……それに、きーくんは、一応は僕の彼女だしね。」
「「「えぇぇぇ!?!?」」」
吹雪の話の前半部分には確かに驚いた。椿が女の子の服装をしていた時期があったとは驚きである。が、もっと驚いたのは吹雪の最後の発言。さっきまで女の子扱いするなと言っていた本人がしてるのではないか?という疑問も生まれてくる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。今のはどういうことだ?女の子扱いしちゃいけないのに彼女!?え!?」
土門がやっとのことで聞く。
「うーんとね、僕はきーくんのことを女の子扱いしてるわけじゃないんだ。きーくんが女の子だろうと、男の子だろうと変わらずに好きだから。ほら、だからさっき、『一応彼女』って言ったでしょ?」
3人は少しパニクった頭で先ほどの吹雪の言葉を思い出す。
確かに一応と言っていた。
「北条は吹雪のことを好きでちゃんと付き合ってるってことか?」
ここで風丸が聞く。
「うん。」
吹雪が頷いたことで、風丸の初恋は失恋に終わる。
吹雪はみんなが放心気味で固まっていたため、1人で買い物に戻った。なにせ、キャラバンで眠っている椿の昼食を買わなければならないのだから。