第2章 プロローグ
そしてフットボールフロンティア地区予選一回戦。
「おい!北条は?」
「それが、電話も繋がんなくて。」
「あいつ、また寝てやがんのか。」
椿が到着する前に試合が開始する。
前半が終わり、ハーフタイム。
「遅れてすみません!!!」
椿がベンチに入ってくる。
「北条!お前、また寝てたのか!?」
洸平は椿の頭を叩く。
「いや、ちゃんと起きてましたって!ただ…その、母親に捕まりまして。すみません!!こんな大事な試合の時に遅刻するなんて。俺には試合に出る資格なんてありません。試合に出ない奴はベンチに入ることはできない。だから俺、帰ります。来て早々すみません!」
椿はそう言って踵を返す。
「おい待て。」
洸平が椿の腕を掴み、引き止める。
「お前の家の事情については理解してるつもりだ。ここにいる全員が、だ。母親に捕まってたなら仕方ない。試合には出ろ。このチームはお前のディフェンス力がなきゃ勝てねぇんだ。てか、お前がいなかったおかげで1-0じゃねぇかよ。負けてんだよ。これ以上点差つけられてたまるか。お前がいれば、敵はうちのゴールにはたどり着けない。そうだろ?」
「はい!ありがとうございます!」
椿は急いでスニーカーからスパイクに履き替え、ジャージを脱ぐ。
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試合が終了した。
確かに、椿が試合に出始めてから、敵チームは椿を抜くことができない。
ボールテクニックもさることながら、どんなシュート技でも止める彼の必殺技のおかげだ。
しかし、彼らのチームも攻めあぐねていた。
そして、一点も取ることが出来ずに無残にも試合終了のホイッスルが鳴る。
結果は1-0。
「すみません!俺がもっと早くに来てたら負けることもなかったかもしれないのに。」
「いや、お前はよくやった。お前が入ってからは一度もシュートを打たせてないんだからな。むしろ点を取ることのできなかった俺たちが悪い。」
洸平は謝る椿の頭を撫でる。
周りで見てるチームメイトは、この2人仲良いなぁ。と微笑ましく見ている。