第5章 白恋中サッカー部
この日は椿が初めてフル時間練習に参加した日だった。
「あれ、北条は?」
「さっきキャラバンの方に行ったのを見たけど。」
通称椿お世話係の風丸が椿の不在に気づく。一之瀬がキャラバンの方を指差して風丸の独り言に答えた。
「今からご飯だってのにあいつは。俺、呼んでくるな。」
風丸はそう言ってキャラバンへと走る。
キャラバンに着き、風丸は勢いよくドアを開けた。
すると、中には着替えをしてる椿がいた。
「あ、その、悪い!」
風丸は咄嗟にドアを閉め、外に出た。
やばい、やばい。着替えを見てしまった。いや、背中しか見えてないから別にそんな見てしまったとかじゃ。いや、見てしまったことは事実で、俺は男であいつは女で。
風丸はもうパニック。
逆に椿。
え?なんであいつ出てった?え?背中しか見えてなかったよな?普通、男が着替えてるの見て出ていかないよな?え?バレてる?は?え?なんで?
こちらもパニック。
「あの。どうしたの?」
もうよくわかんないけどいいや!と腹を括った椿は着替えて外に出る。
「その、別に、ご飯なのにいないから呼びにきたんだが。」
「で?」
「着替え、のぞいて悪い。悪気は無い。」
「なんで着替えのぞいたら悪いと思った?いつもみんなで着替えてるだろ?」
そこで風丸は気づく。
あ、俺が知ってること悟られちゃいけないんだった。これじゃ俺が知ってるって言ってるようなもんじゃん。
と、、
しかし、時すでに遅し。
「なんで知ってる?」
「な、なにが?」
椿はすごい顔で風丸を睨んだ。
「俺が着替えてるの見てそんなに焦るってことは知ってるだろ?俺が女って。」
悟られてしまった!風丸はなんとか誤魔化そうとした。でもそんなにすぐに言い訳は出てこない。オロオロしてると椿が笑った。
「別にいいよ。知ってた上で知らない振りをしようとしてくれてたんだろ?これからも今まで通り知らない振りをしてくれれば。」
「う、うん。」
風丸は呆気に取られて真顔で返事をする。