第5章 白恋中サッカー部
その後、洗濯物を干し終え、昼食作りに入る。
「北条くん、料理とかってできる?」
「まぁ、人並みにはできると思うぜ。」
「じゃあおにぎりとかは余裕かな?」
椿は頷く。
秋は椿を連れて食堂に来ていた。
そこではすでに春奈と夏未が炊き立てのご飯をボウルに移して少しずつ冷ましてるところだった。
「北条先輩!手伝ってくれるんですか?」
「うん、暇だし。」
春奈が笑顔で駆け寄って来て聞く。
そして4人でおにぎりを作っていた。
「北条くん、上手。」
「私より上手ですね。嫉妬します。なんでそんなに綺麗な形になるんですか?」
「うーん。慣れ?あとは、手の形と力加減とか?」
椿は自分の握り方を確認しながら春奈に見せる。
「よく作るの?」
「まぁ。昔から自分のご飯は自分で作ってたから。」
「「自分で!?」」
「母さんが跡取りなんだからなんでも完璧にこなせるようになりなさいって。」
椿は昔を思い出してげんなり。
夏未は椿のことを認めてないから会話には参加したくないけど、椿の作るおにぎりがあまりにも綺麗だったため、椿の手元を盗み見ていた。
「うん。北条くんは完璧な気する。」
「いや、母さん曰く全然ダメだって。俺には表情がないらしい。表情がなかったら例え完璧でも意味ないって。」
「北条先輩って表情ないんですか?喜怒哀楽とかもありますよね?」
「あ、俺、笑うの苦手なんだ。態度にはでるけど表情にはでないし。多分それ言われたんだと思う。」
秋と春奈は椿が笑ってるところを思い出す。
よくよく考えるとほぼ寝てる椿の笑顔は思い出せなかった。たまーに口角が上がってるのも見なくもないが。
「うん。ごめんね、そうだね。」
「だろ?」
3人は笑う。でもやっぱり椿の顔は変化が少なかった。
やっとおにぎりが完成し、秋が選手を呼びに行った。
「俺、これだけでいいや。寝てくるからまた何か必要になったら呼んでくれ。夕飯作んのとかも手伝うし。」
椿は自分で作ったおにぎりを1つ持ち、食べながらキャラバンに入っていった。