第5章 白恋中サッカー部
「これ、運んで欲しいの。」
椿は秋が指差した洗濯籠を持ち物干し竿のところまで歩く。
「こんな量あんのに1人で持ってんのか?大変だな。」
「マネージャーだもの。みんなの方が大変よ。宇宙人と戦うと怪我もするし。見てるのが嫌。」
「まぁ、負けるとこは見せたくないな。俺は試合に出れるかわかんねぇけど。」
「目まだ痛い?」
「そりゃ痛いよ。でも前よりはマシだな。」
椿は閉じてる左目の眼球を上下左右に動かしてみる。
「この前から気になってたんだけど、なんで北条くんは髪の毛を自分で切ってたの?」
「床屋とか行ったことないんだ。いつも家に来てもらって切ってたから。だから、いざ床屋に行こうと思ってもどうすんのかわかんなくなった。」
「なるほど。」
椿は洗濯籠に入ってる洗濯物を一枚ずつ秋に手渡す。それを秋が物干し竿に干していく。
「北条くんが起きてるの珍しいけど、なんかあったの?」
「士郎がいるからだな。」
「吹雪くん?」
「あいつがいると、俺は少しだけど普通になれるんだ。俺にとって士郎は父さん以外で初めて信頼した人なんだ。だからあいつがいると安心して精神的に安定する。」
「そっか。2人は本当に仲がいいのね。」
「まぁ、そうだな。士郎は俺の弟みたいなもんかな。いつも俺の後ろにくっついて来て、きーくん助けてって。あの頃の士郎は可愛かった。」
椿は、昔小さい虫にすらビビって走って逃げてきた吹雪を思い出す。