第5章 白恋中サッカー部
「北条ー?」
時刻は夕飯前、夜だった。そのためだろうか、呼びかけると椿はすぐに起きた。
「体調はどう?大丈夫?」
「頭痛い。」
一之瀬が気遣うように椿を覗き込んでいる。
「もうすぐご飯なんだが来れそうか?昨日の夜から何も食べてないだろ?」
「行く。」
椿は少しフラフラしながら立ち上がる。
「フラフラじゃないか。ほら、風丸はそっち支えてやれ。」
一之瀬が椿の左腕を支えた。
「別に平気だよ。」
椿は断るが一之瀬は譲らない。
「そんなフラフラじゃいつ倒れるかわかんないだろ?ほら、風丸。」
その時風丸は思う。
こいつ女の子なんだよな。女の子の腕にあんなに密着して良いのだろうか。でも転んじゃったら大変。どうしよう!でも、北条にも知ってるって悟られないようにしないといけないからな。よし!
風丸はそう決意して椿の右腕を支えた。
「悪りぃな。」
椿は本当に申し訳ないと思っていた。
自分は夜寝たっていうだけであんな悪夢を見て、熱まで出す。本当に情けない。
熱で回らない頭ではそんなことを考えるのも怠くて、風丸が心配しているようなことは一切感じていなかった。
まぁ、いつもそんなこと考えてないのだけれど。何せ、男として育てられているから人の性別とかには疎いのだ。
みんなが集まる教室に入っていく。風丸と一之瀬は教室の端っこに並べておいた椅子に椿を寝かせる。
それに気づいた秋が近づいてくる。
「北条くん、大丈夫?」
椿は頷く。
「ご飯食べれそう?」
「お腹は空いてるけど食欲ないかも。」
「じゃあお粥にしよっか。」
「ごめん、そうしてくれると助かる。みんなの分もあるのに悪りぃ。」
「良いのよ。具合悪い時は周りに甘えるものなの。」
秋は笑ってキッチンへ戻っていった。
「ご飯までまだ時間ありそうだし寝とけば?ここうるさいけど。」
「あぁ、うるさくても寝れるから平気。寝るわ。ありがと。」
椿は一之瀬の提案に素直に従い目を閉じた。