第3章 雷門中サッカー部
「あのー。それつまり、まだ跡取りは決めないってことだよな?」
円堂が駆け寄って来て言う。
椿はそれに頷く。
「じゃあいいじゃないか!跡取り決めるってなったら帰ってくれば!」
「違うのよ!!他人が口挟まないで!」
実和子は椿から離れ、円堂の頬にビンタをしようと腕を振りかぶる。
バシン!!!
実和子の手は円堂の前に立った椿の目に当たる。
「「北条!」」
実和子の指が丁度目に入ったらしい。椿は痛みで左目を押さえてその場に蹲る。
「木野さん!」
瞳子は秋に応急手当てをするよう指示する。
「椿?椿?なんで庇ったりなんかしたのよ。大丈夫?痛くない?痛いわよね。ごめんなさいね。大丈夫?」
実和子は椿の顔を覗き込み椿の左手を目から退かそうとする。
「触らないください。」
「そんなこと言わないで。目を見せて欲しいの。お願い。」
「じゃあ、見せるから俺はキャラバンに乗ります。いいですよね?」
椿がいつも交換条件を出すのは実和子の影響なのだ。
「分かったわ。もう中学卒業まではあなたに干渉しないから。」
椿は手を退けて目を見せる。
満足に目を開けられず少ししか開かれていない。しかも白目が充血して真っ赤になっている。
「これ、使って。」
秋が椿にアイシングを渡す。
「ありがと」
椿はアイシングを受け取ってすぐに目を隠す。
椿の目を見ると実和子はすぐに車に戻って行った。
「北条くん、病院に行きましょう。」