第3章 雷門中サッカー部
椿は実和子から逃げたくて雷門イレブンの輪の中に入り、円堂に声をかける。
「まじごめん。あの人、俺のこと自分の人生の駒としか見てないんだ。ちょっと説得時間かかるかも。」
「大丈夫だ!それよりお前は大丈夫なのか?」
椿は頷く。
「北条は俺たちとサッカーがやりたいって思ってくれてるんだよな?」
「もちろんだろ。雷門のサッカーは楽しそうだ。俺はあの人のせいで楽しいサッカーをなかなかできなかった。楽しいサッカーがしたい!」
椿は実和子を一瞥して言う。
「椿!来なさい!」
その時実和子に呼ばれて椿はビクッとしながら実和子のもとに行く。
「今すぐサッカーをやめなさい。サッカーなんて私から全てを奪うものなの。あなたも知ってるわよね?お父さんがなぜ死んだのか。サッカーは私からお父さんも椿も奪うの。私を1人にしないで。」
実和子は椿の腰に抱きつく。
「あ、あの、別に父さんが死んだのはサッカーのせいじゃないはずです。病気のせい。俺のせい。それに俺はすぐに戻ってきます。ちゃんと約束は守ります。中学卒業したら俺は母さんの言うことちゃんと聞きます。だからお願いします。」
椿は実和子に何かを意見したことがほぼなかった。実和子が怒ると自分ではどうにも出来ないことを知っていたから。でもサッカーだけは譲れなかった。
「そんな暢気にできないのよ。今にも恭介くんが跡取りになるかもしれないのよ。」
「それは、ないとおも「わからないじゃない!」」
実和子は椿の声をかき消す。
「お祖父様がいつ跡取りを決めるか。その時に椿がいなかったら私の人生は終わりよ。どこにも行かせないわ。」
実和子は椿のことを離そうとしない。