第12章 炎のストライカー
「士郎……。」
椿はその吹雪の後ろ姿を眺めていた。
どんどん視界が狭まっていく。前が見えない。息が苦しい。クラクラする。ぐわんぐわんする。上と下がわからない。目が回る。
——士郎がまたいなくなっちゃう。
「ハァハァ、」
「北条?」
近くにいた一之瀬が椿の息が荒くなっていくのに気がついた。
椿は苦しさからユニホームの胸元をギュッと握った。立っているのもやっとだった。
「おい、北条!」
一之瀬が大声で呼んだことでやっと少しずつ視界が開けてきた。
「大丈夫か?」
「うん、平気。ごめん。大丈夫。大丈夫。うん。大丈夫。」
一之瀬に返事をしたというよりは自分に言い聞かせるようにそう言った。
大丈夫。士郎はいなくなったわけじゃない。今はちょっと体調が良くなくていないだけ。大丈夫。俺はまだ一人じゃない。