第12章 炎のストライカー
「なんか、住んでる世界が違うって感じちゃうな。あたしは北条のことよくわからないけどあの母親といいさ、普通の生活をしてきてないってのが行動の端々から伝わってくるじゃん。地下の部屋で換気扇が特別ってなんだよ。今の話じゃ、普段からあんまり外に出てなかったってことだろ?」
塔子はまるで自分のことのように辛そうにそう言った。
「前に閉じ込められてたって話もしてたよな?」
一之瀬もそう言って辛そうに椿を見た。
その椿はまだ辛そうに、苦しそうに顔を顰めている。
「僕から詳しく言うのは違うと思うから言えない。だからといって、昔のことを思い出させたくないからきーくんに聞くのもやめて欲しいって思っちゃう。でもみんなは仲間で、きーくんが普通とは違うってわかってもこうやって心配してくれてる。だから、少しだけ。本当に、ほんの少しだけ昔のきーくんのことを話すよ。」
吹雪は地面に寝たままだった椿をベンチへ移し、自分のジャージを椿にかけながらそう言った。
吹雪が話を始めようとしたところに、サーフィンの練習のため海に行っていた円堂と綱海が戻ってきた。
「みんなどうしたんだ?」
「そうだぜ、なんか暗い顔してよ。」
円堂と綱海はみんなが真剣な顔、なおかつ辛そうな顔をしているのを見て戸惑っているようだった。
「吹雪が昔の北条について少しだけだが話してくれることになった。」
そんな2人に鬼道が冷静に言った。
そして2人も真剣な顔つきになったのを確認した吹雪は話を始めた。