第11章 過去
「明日には北条くんの親戚の人が来てくれるそうよ。北条くんは昔から肺が弱いらしいの。だからそれは持病の発作。北条くんが持ってる酸素ボンベで呼吸を安定させれば問題ないわ。」
監督はそう言うと、椿の鞄をあさり、中から酸素ボンベを取り出して椿に取り付けた。
それでも咳は止まらず、苦しそうである。
元から酸素ボンベなどが準備してあったということは本当に持病なのだろう。と周りのみんなは判断した。
次の日、全員が練習に集中できていない中、1人の青年がグラウンドを覗いていた。
不振に思い、鬼道がその青年に声をかけに行った。
「何か用ですか?」
「あ、きーの薬を。昨日電話があったから。」
「きー?あ、北条のことですか?」
「そう!北条椿。俺、きーの従兄弟の北条恭介です。」
鬼道はキャラバンまで恭介を案内した。
後ろから他のメンバーも着いて来ていた。
「きー、いい加減起きろ。寝てばっかだから発作起こすんだよ。って、あれ?そういえば士郎は?」
恭介は椿の肩を叩きながら振り向き、鬼道に聞いた。
「吹雪は今、ちょっと。あの、吹雪に何か?」
「そういうことか。最近きーは昼間起きてた?」
恭介の問いにみんな頷く。
「士郎がいなくなってから数日。だから夜寝れなくなったのか。なるほど、そりゃ発作も起こすわな。」
恭介の意味深な言葉に全員が"?"を頭の上に浮かべた。