第7章 前の会社
この会社は、
社内恋愛禁止というものはない。
男同士だから煙たがられた処置。
人間関係であれば左遷が妥当。
遠い事業所へ飛ばされなかったのは、
湊の仕事の質を知っての…手回しなのか。
どちらにせよ、
長瀬の父親から二度目はないと
言われているのは確かだ。
「今、長瀬と連絡は取り合っているのか?」
「いえ…。
もう今後一切関わらないようにしようって、
会ってもなければ話もしてません。
連絡先はすべて切りました」
「そうか。長瀬にも…、
同様の嫌がらせを受けていないかが心配だな。
湊だけなのか、
副社長の息子が気に食わなくて
貶めようとしているのか…」
ターゲットは二人。
湊か、長瀬親子か…それとも丸ごとか。
「俺はどうなっても良いので、
長瀬のことよろしくお願」
「おまえがどうなっても困るのは俺だ。
長瀬の状況は俺が直接聞きに行く。
おまえは今、
看病してくれる相手もいないんだろ?
上になんて言われようと否定を続けろ。
人でなしのような言われ方をしてもそこは、
なにがなんでも無実だと突き通せ。
性別の壁で左遷なんて笑えるか。
おまえもまだ、
俺と一緒に働きたいだろ?」
湊は目に涙を滲ませる。
正直に話してくれて嬉しかった。
あとは俺がその期待に答えてやる番だ。